第7回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


血漿型PAFアセチルヒドロラーゼ遺伝子のG994ー->T変異と日本人における腹部大動脈瘤発症との関連についての研究

Association of a G994-->T Missense Mutation in the Plasma Platelet-activating Factor Acetylhydrolase Gene With Risk of Abdominal Aortic Aneurysm in Japanese.

ANNALS OF SURGERY, Vol.235(2),297-302,2002.

海野直樹氏  (医学科大学院第6期生)  本学外科学第2講座  講師


[背景と目的]     近年,炎症性 mediator の一つである血小板活性化因子(PAF)を分解する酵素である血漿型 PAFーacetylhydrolase (PAF-AH)が,遺伝子変異により欠損あるいは欠乏している人が日本人に特異的に存在し,全人口の約20〜25%に及ぶことが判明した。今回,PAF-AH遺伝子変異と腹部大動脈瘤(AAA)発症との関連について検討を行った。

[対象と方法]     浜松医科大学第2外科で検査,治療を行ったAAA患者131人を対象とした(AAA群)。また動脈硬化性疾患の既往歴を持たず,年令,性分布を同じくした106人をコントロール群(c群)として比較した。浜松医科大学倫理委員会の承認の後,患者より同意を得て血液を採取,DNAを抽出し,allele specific PCR 法にて解析した。DNA解析から患者を正常型(GG),ヘテロ欠損型(GT),ホモ欠損型(TT)に分類した。また,血漿中のPAF-AH酵素活性をradioimmunoassay にて測定した。

[結    果]     変異遺伝子である Tallele の頻度はC群では,12.7% であったのに対し,AAA群では,21.4%と有意に高かった。PAF-AH 酵素活性は,GT 群では GG 群の約2分の1,TT 群では0だった。他の動脈硬化危険因子との間で多変量解析を行うと,オッズ比 2.48 と喫煙や高血圧などの因子と同様,PAF-AH 遺伝子異常が AAA 発症の独立した危険因子であることが判明した。さらに,AAA 患者における脳梗塞や心筋梗塞など他の動脈硬化症合併について検討したところ,PAF-AH 遺伝子異常を持ち,かつ高脂血症の患者ではどちらも正常な患者に比し,他の動脈硬化症合併のオッズ比は 9.43 と高率であった。

[結    語]      血漿型 PAFーAH 遺伝子変異は AAA 発症の risk factor であり,とくに高脂血症との関連から日本人の動脈硬化症に密接な関連を持つものと推察された。