第5回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文



ヒトミニサテライトB6.7の性細胞由来の突然変異時における非常に複雑な反復配列の配置変換

玉木 敬二(医学科第4期生)


ヒトのミニサテライトB6.7について我々が家系調査を行ったところ、このミニサテライトの突然変異率は父由来、母由来それぞれ7.0%、3.9%であり、現在報告されているもののうちで最も高い突然変異性を有しているローカスのひとつであった。我々は一個の細胞分のDNA分析を可能にするsmall pool-PCR法を開発し、精子DNAや血液DNAを分析して固体のアリルの突然変異率を直接測定することに成功した。これによれば、精子(性細胞)における突然変異率は最高14%にも達し、アリルの長さに比例して増加する傾向にあることがわかった。それに対し、血液では0.5%以下であり、従来他のミニサテライトで報告されているように、ミニサテライトの突然変異は減数分裂時に特異的に発生することが示された。我々は、リピート内の4つの多型部位を利用してリピートを分類し、アリルをマッピングするMVR−PCR法を開発して、精子1個からの突然変異体のマッピング数を数多くおこなった。これにより、突然変異は同一アリル内のリピートの縦列反復や欠失だけでなく、姉妹染色分体間や相同染色体間のリピートの変換(conversion)によって起こっていることが示された。驚くべきことに、従来報告されているような単純な変異構造を示すものは少なく、殆どの例でアリル内のリピートのconversionを起こしている場所に、はるかに複雑なリピートの置換があり、また多くの新生リピートがあることが観察された。これは、減数分裂時のヘテロ二重鎖の解離がリピート以下の長さで頻繁に行われているため、固体の双方のアリルには存在しない新しいリピートが生成されることを強く示唆した。

このようにB6.7によって初めてとらえられた突然変異のアリル構造は、単一の突然変異でも変異を起こすアリルが複数回他のアリルから構造情報を受け取ったり、ヘテロ二重鎖の頻繁な解離がおこることが示され、ヒトゲノム内におけるミニサテライトの役割や進化を考察する有用な知見を与えた。