第5回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文


乳児急性リンパ性白血病にみられた染色体転座ins(5;11)(q31;q13q23)により
MLL遺伝子と融合遺伝子を形成する新規AF4関連遺伝子AF5q31の単離

滝 智彦 (大学院第14期生)



MLL遺伝子は染色体11q23の転座切断から単離された。転座相手が非常に多彩であることが特徴で、最近その機能の一つがHox遺伝子の発現維持であることが判明した。MLL遺伝子の再構成は急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群でみられ、特に生後一年以内に発症する乳児ALLでは70%以上に再構成がみられる。MLL遺伝子再構成を有する乳児ALLは、CD10陰性/CD19陽性のearly pre-B の表現型をとり、予後不良である。その中でもt(4;11)は乳児ALLでみられる11q23転座の最も代表的なもので、他の11q23転座型白血病に比べてきわめて予後不良である。

我々はins(5;11)(q31;q13q23)を有する乳児early pre-BALLの解析を行い、MLL遺伝子と融合遺伝子を形成する新規遺伝子AF5q31遺伝子を単離した。AF5q31遺伝子は染色体5q31のサイトカイン遺伝子集中領域の近傍に座位し、1163個のアミノ酸をコードしていた。興味深いことに、この遺伝子はt(4;11)においてMLL遺伝子と融合遺伝子を形成するAF4遺伝子と高い相同性を有し、両者の切断点も同じ転写活性化領域の中に存在した。AF5q31遺伝子は胎児の心臓、肺、脳では高発現、肝臓では低発現していたが、成人のこれらの組織での発現は胎児組織に比べて減弱していた。AF4遺伝子の発現は、胎児組織ではAF5q31遺伝子と一部異なっていたが、成人組織では同様のパターンを示した。MLL-AF5q31キメラ転写産物を発現する本症例は、t(4;11)−ALLと同様の表現型で、予後が悪く、臨床像も類似していた。

これまでMLL-AF4のは白血病化における機能はあまりわかっていなかったが、相同性が高いAF5q31遺伝子とAF4遺伝子が類似の白血病の転座に関与していることから、2つの遺伝子は類似の機能を持ち、同様の機序で白血病に関与していることが示唆され、今後これらの機能解析により予後不良な乳幼児ALLの白血病化のメカニズムが解明されることが期待される。