第9回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


APPCR ( arbitrarily primed PCR ) 法によって評価されたゲノムのダメージの程度は胃癌の有用な予後因子である

The Genomic Damage Estimated by Arbitrarily Primed PCR DNA Fingerprinting is Useful for the Prognosis of Gastric Cancer.
Gastroenterology 2003;125:1330-1340.

鈴木浩一氏  (医学科第9期生)    渡米中(バーナム研究所)  本学第1外科所属

遺伝子増幅、ヘテロ接合性の消失、マイクロサテライト不安定性など様々なゲノムの異常が胃癌において観察されている。これらの変化は、発癌に関与する遺伝子が異常を来す礎となっているゲノムの不安定性の一部を表現していると考えられる。一腫瘍内には多くのゲノムの異常が共存しうる。既存の遺伝子や特定のマーカーの異常として検出されるもの以外に、ゲノム全域に渡って蓄積された異常をゲノムダメージとして包括的に補足することによりゲノム不安定性の程度を評価できれば、腫瘍の生物学的悪性度と相関すると考えられる。本研究では APPCR ( arbitrarily primed PCR ) 法を用いて74症例の原発胃癌手術患者のゲノムのダメージの程度を評価し予後との相関を検討した。

APPCR法によって fingerprinting 上に認められたバンドの変化をスコアー化し、GDF(genomic damage fraction) を算出してゲノムのダメージの程度を評価した。そのうち36症例はArray CGH(comparative genomic hybridization ) を行い、DNAのコピー数の増加に関してAPPCR法と array CGH法で得られた結果の比較を行った。

バンドの変化は個々の腫瘍による大きく異なり、約40のバンドのうち平均22%の変化が認められた。GDFは arrayCGH法で得られた結果と一致していた。GDFの平均値0.22を cutoff値とし予後を比較すると、GDFはマイクロサテライト不安定性の有無によらない統計学的に有為な予後因子であった。多変量解析ではGDFはステージと同様独立した予後因子であることを示した。特に根治手術が可能であった46症例ではGDFが唯一の予後因子であった。

本研究により、APPCR法によって評価されたゲノムのダメージの程度は胃癌の有用な予後因子となりうることが示唆された。