
佐 藤 洋 氏 医学科第6回生本学内科学第三講座Q1. 受賞の喜び 今回、同窓会学術奨励賞を頂いたことは大変名誉なことであり、関係の先生方には、大変感謝致します。実は、過去2回の応募では落選しているのですが、その時の受賞論文を見ると、その質の高さに驚き、また恥じ入ったものでした。
1985年に卒業して以来、第一線の臨床病院で、多くの虚血性冠動脈疾患を治療してきました。急性心筋梗塞に対しては、冠動脈の再灌流療法が有効なのですが、再灌流したために却って心臓を傷害する、再灌流障害があり、解決すべき大きな問題であります。1990年から、大学院に入学し、現林教授のもとで、心筋細胞のCa 代謝、特に虚血/再灌流障害におけるCa過負荷のメカニズムをテーマに研究を開始しました。結果、細胞膜のNa/Ca 交換機構が重要であることが解りましたが、Na/Ca 交換の調節系は複雑であり、生きた心筋での研究は困難でした。1996年、国立循環器病センターと鐘紡薬品からNa/Ca 交換の選択的阻害薬KB-R7943が開発されました。今回は、この薬を用いて虚血/再灌流障害におけるNa/Ca 交換の関与を明らかにしようと考えました。
KB-R7943の非特異的作用として、細胞膜のカリウム、カルシウムチャンネルへの抑制作用があり、それらを鑑別するためには、膜電位固定法のテクニックが必要でした。当科の装置では正確な測定が困難であるため、留学先であった、ロヨラ大学の Bers教授、Ginsburg先生と相談して、これらの測定を行って頂いたのですが、情報交換に行き違いがあったりして、苦労しました。
当科は臨床教室であり、特に二次救急が始まってから臨床に割く時間の方が多くなり、研究がなかなか進みません。しかし、今年は有能な大学院生が帰局し、彼らとともに新しいテーマの研究を進めようと準備しているところです。
虚血/再灌流障害の軽減のためには、Na/Ca交換などを介するCa過負荷の予防とともに、ミトコンドリアの保護も重要であり、最近ミトコンドリア膜のATP感受性カリウムチャンネルが注目されています。また、心不全における収縮障害のの一因として、筋小胞体からのCa漏出の増加が提唱されており、この異常にFK506結合蛋白の解離が関与すると報告されています。今後は、これらの課題について研究を進めて行きたいと思います。 |