第7回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


腫瘍転移抑制遺伝子 nm23H1 によるヌクレオチド交換因子 Tiam1 を介する Rac1GTPase の制御

Tumor metastasis suppressor nm23H1 regulates Rac1 GTPase by interaction with Tiam1.
     P.N.A.S.USA98,4385-4390,2001.

大月寛郎氏 (医学科第19期生) 聖隷浜松病院 病理学第1講座

Nm23-H1 は齧歯類のメラノーマにおいて単離された腫瘍転移抑制遺伝子であるが,腫瘍形成に促進的に働くという矛盾した報告も最近みられる。また,それらのメカニズムについてはほとんど解明されていない。近年,nm23-H1 は RasファミリーのGTPase の Rad に対してGTPase-activating protein(GAP)としての作用があると報告された。

我々は,nm23-H1は,Rho ファミリーGTPase の制御機構の有無について調べた。in vitro にて Wild type の nm23-H1 によりRac1,Cdc42,RhoA は,GDP結合型からGTP結合型への変換がみられた。しかし,in vivo では認められなかった。NDPkinase 不活化型の nm23H の変異体にはこのような作用はみられなかった。このことは nm23-H1 はRhoファミリーGTPaseに対する直接の結合は見られなかった。

また今回Tiam1のアミノ末端に結合すること,そして過剰発現させた nm23-H1によりTiam1のGEFとしての活性を抑制することを確かめることができた。さらに,マウスの線維芽細胞にて過剰発現させた。nm23-H1により細胞外基質フィブロネクチン依存性の内在性Tiam1の細胞膜への局在を減少させることが分かった。このことは,Tiam1を介する細胞移動にnm23-H1が関与していることを意味する。これらの結果によりnm23−H1はTiam1を介してRac1に対するレギュレータであるということが今回新たに確認され,nm23−H1の腫瘍転移抑制のメカニズムの一つの説明になると考えられる。