第8回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


シェーグレン症候群の唾液腺病変におけるインターフェロンγにて誘導される2つのケモカイン、IP-10(CXCL10) と Mig(CXCL9) の関与

Involvement of the IFNγ-induced T cell-attracting chemokines, IFNγ-inducible protein of 10kDa, IP-10 (CXCL10) and monokine induced by IFNγ, Mig (CXCL9) in the salivary gland lesions of Sjogren's syndrome

小川法良(医学科第6期生) 金沢医科大学血液免疫内科 助教授

代表的自己免疫疾患の一つであるシェーングレン症候群(SS)患者の唾液腺ではリンパ球を主体とする細胞浸潤が生じ、組織障害を引き起こし唾液腺機能の廃絶に至る。浸潤細胞の中でも、活性化T細胞が組織障害を引き起こす中心的細胞と考えられている。近年、細胞走化性因子として多くのケモカインが同定されたが、主としてT細胞に作用するケモカインには、CXCR4 を介して静止期T細胞に作用する SDF-1(CXCL12) と CXCR3 を介して活性化T細胞に作用する IP-10(CXCL10) および Mig(CXCL9) が存在する。本研究では、これら3種類のT細胞遊走性ケモカインとそのレセプターを唾液腺組織および独自に開発した培養法により得られた唾液腺上皮細胞を用いて検討した。

唾液腺組織を用いた検討では、PCR-ELISA 法にて IP-10 および Mig の mRNA 発現量が正常唾液腺に比べて SS 唾液腺において有意に増加しており (ともに p<0.01 )、SDF-1 発現量に差はなかった。免疫組織染色法にて IP-10 および Mig は細胞浸潤の強い部位の導管上皮細胞に強く発現していた。また、導管周囲のリンパ球はその大部分が CXCR3 を発現していた。細胞浸潤の強い部位の導管上皮細胞に IP-10 および Mig の強い発現が認められたことより、浸潤細胞から産生されるケモカイン誘導因子の存在が示唆された。

培養唾液腺上皮細胞を用いて検討した結果、IFNγ が上皮細胞にて IP-10 および Mig のmRNA および蛋白産生を誘導することが RT-PCR 法および ELISA 法にて示された。IFNγ 以外のサイトカインでは TNFα が Mig 発現を誘導したのみであり、 IP-10 および Mig 両者の発現を誘導することも示された。

以上より、浸潤細胞から分泌される IFNγ が導管上皮細胞に作用し、 IP-10 および Mig の産生を誘導し、同時にT細胞に CXCR3 発現を誘導することにより、唾液腺におけるサイトカインとケモカインの相互作用を培養唾液腺上皮細胞を用いて証明した世界で初めての報告である。