
中枢神経系幹細胞におけるサイトメガロウイルス感染とその影響:神経幹細胞を用いたウイルス性脳形成障害モデル小杉 伊三夫 |
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サイトメガロウイルス(CMV)は胎内感染によって小頭症等の脳形成障害や精神発達遅滞を引き起こすウイルスとして最も重要である。研究代表者らは、これまで、ヒトCMV(HCMV)と類似した病態を呈するマウスCMV(MCMV)を用いたin vivo 胎内感染モデルを確立し研究を行ってきた。しかし、脳形成障害の発症機序は未だ明らかでない点が多く、新たな知見や発想に基づいた実験モデルによる研究が必要である。 最近の神経科学の進歩から、胎生期の脳形成は脳室壁に存在する中枢神経系(CNS)幹細胞の増殖・分化・移動によることが明らかとなった。さらに、CNS幹細胞は脳の再生・遺伝子治療における移植細胞・担体細胞として大きな関心が寄せられている。一方、研究代表者らのマウスを用いた in vivo 胎内感染モデルでは、感染早期においてCNS幹細胞が多数存在する脳室周囲に感染細胞の出現することが明らかとなっている。また、HCMVの胎内感染でも石灰化等の変化が脳室周囲で最も強いことが報告されている。これらの事実から、CMVのCNS幹細胞への感染が示唆される。しかし、CMVを含めたウイルス感染が脳形成の中心的役割を担うCNS幹細胞にどの様な影響を及ぼすかは明らかでない この様な背景から、研究代表者らは最近培養法の確立したCNS幹細胞を用いた新たな実験モデルによってCMVによる脳障害発症機序の解明を試みた。その結果、MCMVは培養マウスCNS幹細胞に感染し、その増殖・分化・移動を抑制し、特に神経細胞への分化抑制が顕著であった。さらに、感染幹細胞の新生児脳への移植による in vivo 実験でも同様の結果を得た。以上から、ウイルスがCNS幹細胞の本質的機能である自己再生能と多分化能に影響を及ぼすことを初めて明らかにした。今後は、この現象がCMVのどの様な病原性遺伝子産物によるのかを検討していく予定である。 この論文は、CNS幹細胞を脳疾患の発症機序解明に用いた先進的な実験病理学的研究であると評価され、アメリカ・カナダ病理学会の機関紙であるLaboratory Investigation 2000年9月号の cover story して紹介された。
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