第10回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


Diazoxide はラット心室筋細胞においてミトコンドリアの permeability transition pore を開口して細胞質のカルシウムトランジェントを変化させる。

Diazoxide opens the mitochondrial permeability transition pore and alters
Ca2+transients in rat ventricular myocytes.Criculation 2002, 105(22): 2666-2671.

加藤秀樹氏  (医学科第9期生)    本学第3内科 助手

ミトコンドリア(Mito)のATP感受性Kチャンネル(mitoKatp)の開口により心筋の虚血/再灌流障害が軽減することが報告され、虚血性心疾患の新しい治療法として期待されるが、細胞障害軽減の機構については不明である。

虚血/再灌流などの病態時には、Mito 内膜に存在する permeability transition pore(mPTP) が開口し、内膜の透過性亢進とアポトーシスの誘発により細胞障害をきたす。mitoKatp と mPTPと の関連を明らかにすることは、虚血/再灌流障害の病態解明において重要である。

本研究は、mitoKatp の開口薬である Diazoxide(Dz)が細胞内 Ca2+濃度の一過性上昇 (Ca2+ transient; CaT) とMio の膜電位(&Delta&psi,m)、mPTP および酸化還元状態に及ぼす効果について検討した。

心筋細胞に、膜電位感受性色素の TMRE と Ca2+感受性色素の fluo-4 を負荷し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて&Delta&psi,m と CaT を測定した。Dz は CaT を増大し、mitoKATPの阻害薬である 5-HD は、この効果を抑制した。

一方、mitoKatpの開口は、Kの流入より&Delta&psi,mを脱分極すると考えられたが、Dz により&Delta&psi,mには変化を認めなかった。Calcein とCo2+の同時負荷法により Mito に負荷した calcein の leak を mPTP 開口の指標として検討すると、Dz により Mito からの calcein leak は促進され、この効果は mPTP の特異的な阻害薬である cyclosporine A(CsA)により抑制された。また、CsA は Dz による CaT の増加も抑制した。Mito の酸化還元状態を表す FAD 自家蛍光は Dz により増加し、CsA はこの効果を抑制した。

以上より、Dz は mPTP を開口して Mito から Ca2+を放出することにより Cat を増加し、また、Mito の酸化還元状態も変化させることが示された。これらは、mitoKatpの開口と mPTP との関連を明らかにした始めての報告であり、虚血再灌流障害の新しい治療法の確立に有用であると考えられる。