小出幸夫氏

第15回学術奨励賞授賞選考委員会委員長講評




    選考委員会委員長      小出  幸夫



第15回浜松医科大学同窓会奨励賞の選考委員長を仰せつかった。今回で3度目の委員長である。選考委員を公表すると、浦野哲盟教授(生理学第二、同窓会副会長)、梅村和夫教授(薬理学、同窓会長)、 北川雅敏教授(生化学第一)、山本清二准教授(光量子医学研究センター・細胞イメージング研究分野)、坂口孝宣講師(第二外科)に小生を加えた6名であった。

今回は8名の応募があったが、何れも質の高い論文を提出されたため、選考に考慮した。後述する選考経過により、以下の4名が選出された。(50音順):川田一仁氏(医学科20期生、本学第二内科医員)、 早乙女雅夫氏(医学科16期生、本学第三内科 助教)、杉本健氏(医学科14期生、本学第一内科 助教)、藤沢朋幸氏(医学科18期生、本学検査部 助教)今回は期せずして、受賞者は全て学内の 方となったが、意識的なものではないことを明記しておく。

この賞の大まかな選考基準に関する申し合わせ事項については、既に何度も発表している。即ち、本邦で行われた研究を優先すること、海外で行われた研究でも本邦での継続性が 期待されるものは評価すること、臨床研究はその特殊性に鑑み、実験研究とは別枠で考慮する等である。

例年通り、各選考委員は全ての論文に目を通し、更に専門性に鑑み指定された論文を特に熟読して選考委員会に臨んだ。そして各委員は指定された応募論文の内容、質について説明し、その後討論を行った。 順位は発表しないが、何れも質の高い論文で最後は投票にて決定した。

川田氏の Enhanced hepatic Nrf2 activation after ursodeoxycholic acid treatment in patients with primary biliary cirrhosis (原発性胆汁性肝硬変症においてウルソデオキシコール酸は肝 Nrf2 を 活性化する)の論文、これは Antioxid Redox Signal に受理され in press の状態のものである。受賞理由は、上記した選考基準の中の「臨床研究」であり、論文の質も高いことによる。

早乙女氏の受賞論文は Bidirectional Ca2+-dependent control of mitochondrial dynamics by the mitochondrial RhoGTPase, Miro (ミトコンドリア RhoGTPase の Miro は Ca2+ 依存性のミトコンドリア動態を双方向に制御する)で2008年の PNAS に発表された。この研究は国外で行われたものであるが、本学における研究の継続性が認められる優れた論文で ある点が評価された。 )

杉本氏の受賞論文はIL-22 ameliorates intestinal inflammation in a mouse of ulcerative colitis (IL-22はマウス潰瘍性大腸炎モデルの大腸炎を改善させる)で2008年の Journal of Clinical Investigation に発表されたものである。この研究も米国で行われたものだが、杉本氏は一貫して、炎症性腸疾患(IBD)の研究に携わっており継続性が 認められた。また、新規サイトカインであるIL-22にいち早く着目し、大腸炎におけるその役割を明らかにした優れた論文である点が評価された。

藤沢氏の受賞論文は2009年の Journal of Immunology に掲載された Regulation of airway MUC5AC expression by IL-1β and IL-17A; the NF-κB paradigm (IL-1βとIL-17Aによる気道に おける MUC5AC 発現の制御機構; NF-κBパラダイム)である。 NF-κB は気道炎症のみならず粘液過剰産生を引き起こし、慢性気道疾患に関与することを見事に証明した。この論文も 米国製であるが、藤沢氏は本学の呼吸器グループに属しており、研究には継続性が認められた。

以上、今回は外国製の論文が多いことが若干気になったが、本学で活躍されている新進気鋭の諸君の受賞となったことは喜ばしい限りである。

冒頭に記述したように今回は全て質の高い論文であった。今回、選に漏れた諸君は捲土重来を期していただくことを願って止まない。また、次回も多数の優秀な論文の応募を期待している。