第4回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文



アゴニスト刺激およびシェアストレス時の血管内細胞Ca2+
応答におけるミオシン軽鎖キナーゼの役割

渡邊 裕司氏(大学院第5期生)



血管内皮細胞は血管透過性や血管トーヌスを調整し,抗血栓,血管新生,種々の炎症反応にも関与する多機能細胞として循環系のホメオスタシスを維持するうえできわめて重要な役割を果たしている。これら内皮機能の発現・調節に細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度の変化が関与し,とくに細胞外からのCa2+流入が重要であることが注目されているが,その調節メカニズムについては多くの点が明らかではない。

本研究では初代培養血管内皮細胞を用い,細胞内Ca2+濃度は蛍光指示薬であるfura-2/AMおよびindo-1を用い画像解析により評価し,アゴニスト(ブラジキニン:10nM,サプシガーゲン:1M)刺激時およびシェアストレス(5dynes/cmCa2)時の内皮細胞内Ca2+応答におけるミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)の役割について検討した。その結果,1)アゴニスト刺激時および機械的刺激であるシェアストレス時に細胞内Ca2+濃度は上昇し,ミオシン軽鎖のリン酸化も有意に促進すること,2)Ca2+濃度上昇は細胞内ストアからのCa2+放出と細胞外からのCa2+流入の両者が関与し,MLCK阻害剤であるML-9,wortmanninnは細胞内ストアには影響を与えず,細胞外からのCa2+流入を濃度依存的に選択的に阻害すること,3)MLCK阻害剤によるCa2+流入抑制はミオシン軽鎖リン酸化阻害の程度と相関することを認めた。さらに4)ML-9のアナログであるML-7,ML-5は0.1ー25Mの濃度においてML-7>ML-9>ML-5とMLCK阻害活性に一致したCa2+流入抑制作用を示した。

以上の知見は血管内皮細胞内Ca2+濃度調節とくに細胞外からのCa2+流入調整にMLCKが中心的な役割を果たすことを初めて示したものであり,現在MLCKにより調節される内皮機能変化について検討を進めている。