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要旨
(はじめに) 大腸癌の遺伝子不安定性は、マイクロサテライト不安定性(MSI)と染色体不安定性(CIN)の2タイプに大きく分かれる。特に、CINを示す散発性大腸癌は 約85%を占め、紡錘体形成チャックポイントの異常および染色体分配の異常が原因であると考えられているが定説はない。 近年、正確な染色体分配が行われる上で重要な分子として同定されたシュゴシン(hSgo1)の異常が染色体分配の異常に関わることから、 大腸癌における発育進展過程においても hSgo1 の異常が何らかの関わりを有すると推測されたが、詳細な報告はなかった。 そこで我々は、大腸癌における hSgo1 の分子病理学的変化や臨床的意義を企図した。 (方法と結果) 46名の大腸癌症例において、腫瘍部では近傍の正常部に比べ hSgo1 の発現が有意に低下していた。更には、hSgo1 mRNA の腫瘍部/正常部比(T/N比)が0.5未満の群では T/N比が0.5以上の群に比し、癌の左側大腸への局在が強く、染色体数の変化に富んでおり、hSgo1 の発現低下が CIN に関わっている可能性が推測された。 得られた臨床病理学的事実を踏まえ、hSgo1 shRNA 発現ベクターを大腸癌細胞株 HCT116 に導入した結果、生細胞の経時的観察では M 期の時間が長く、mitotic catastrophe、異常細胞質分裂や 2核細胞の出現、mitotic slippage が高頻度に観察された。更に hSgo1 低下細胞株では染色体の数的異常、micronuclei 陽性細胞の出現、および中心体数の異常が認められた。以上より hSgo1 の低下 による CIN の誘導が確認された。 (結論) 腫瘍部における hSgo1 の発現が正常部に比べて低下している大腸癌は臨床病理学的に CIN の特徴を備えており、hSgo1 の発現を低下させることで CIN を誘導することが示唆された。 |