第15回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


IL-22 はマウス潰瘍性大腸炎モデルの大腸炎を改善させる

IL-22 ameliorates intestinal inflammation in a mouse model of ulcerative colitis.       Journal of Clinical Investigation 118:534-544,2008

杉本  健氏  (医学科第14期生)    本学  内科学第一講座  助教

要旨

IL-22 は STAT3 を強力に活性化するサイトカインである。炎症性腸疾患患者の大腸粘膜において IL-22 の発現が亢進していることが報告されているが、 IL-22 がどのように炎症性腸疾患の病態に関与しているのかはこれまで明らかにされていなかった。

IL-22 の受容体は大腸上皮細胞のような innate immune cells に強く発現 していることより IL-22 は粘膜防御系に深く関与していると考えられた。 我々は炎症性腸疾患の粘膜病変における IL-22 の機能を評価するために、潰瘍性大腸炎類似の腸炎を自然発症する T 細胞受容体 α 欠損(TCRαKO) マウスの大腸粘膜に non-microbial-mediated gene-delivery system を用いて IL-22 を強制発現させた。

TCRαKO マウスの大腸病変部では、ヒトの潰瘍性大腸と同様に杯細胞の減少がみられるが、IL-22 を発現させた部位では杯細胞が増加しており、大腸炎の 改善も認められた。また、IL-22 を強制発現させた部位においては STAT3 が活性化しており、goblet cell-associated gene の発現亢進も認められ、 IL-22 が大腸粘膜に作用し、同部位での mucin 産生に関与していることが示唆された。

逆にマウス DSS 腸炎モデルに抗 IL-22 抗体を投与し、IL-22 を中和すると、大腸粘膜における STAT3 が抑制され、goblet 細胞の数も減少し、腸炎増悪が 観察された。大腸癌培養細胞を使った実験では、siRNA により STAT3 を抑制すると goblet cell-associated gene の発現も抑制されることより、IL-22 の 刺激による mucin 産生には STAT3 が必要であることが確認された。

以上より、IL-22 は大腸上皮細胞に作用し、STAT3 を介して mucin 産生を誘導し、腸炎抑制に関与していることが示された。