第15回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


ミトコンドリア RhoGTPase の Miro は Ca2+ 依存性のミトコンドリア動態を双方向性に制御する

Bidirectional Ca2+-dependent control of mitochondrial dynamics by the mitochondrial PhoGTPase, Miro.     PNAS USA, 105:20728-33,2008

早乙女雅夫氏  (医学科第16期生)    本学  第三内科  助教

要旨

【目的】 ミトコンドリアは細胞内において細胞骨格(microtube)に沿った移動を行い、細胞内局所でのホメオスタシスに関わっている。この細胞内の ミトコンドリア運動は細胞内 Ca2+濃度の変化によって調節を受けるが、その詳細なメカニズムは未だに解明されていない。Mitochondrial Rho GTPase (Miro)は ミトコンドリア外膜接続し、2つの Ca2+binding site(EF-hands)を有し、motor protein との連結が報告されている GTPase である。そのため、我々はこの Miro と Ca2+依存性のミトコンドリア運動との関係について研究を行った。

【方法・結果】 1)H9c2 細胞(cardiac myoblast)に Miro を過剰発現させると、細胞内の Ca2+濃度が低い状態ではミトコンドリア運動は促進され、EF-hands の mutation を有する Miro を過剰発現させた細胞でもこの運動促進が認められた。

2)Miroを過剰発現させた細胞に Ca2+刺激を与えた場合には、ミトコンドリア運動の Ca2+感受性は増強された。反対に EF-hands の mutation を 有する Miro を過剰発現させた細胞や Miro の siRNA を行った(発現抑制)細胞ではミトコンドリア運動の Ca2+感受性は弱められた。

3)Miro を過剰発現させたニューロンにおいて、Ca2+濃度が低い状態ではミトコンドリア同士の融合が認められ、細胞内 Ca2+が上昇した状態においては ミトコンドリアの分離が促進された。この Miro によるミトコンドリア形態の調節は、ミトコンドリア分離調節蛋白である dynamin related protein 1 (Drp1)の作用を 介していることが示唆された。

【総括】 以上より Miro は、細胞内Ca2+濃度の変化を介してミトコンドリア運動とミトコンドリア融合・分離に対して双方性の調節機能を有すると考えられた。