第15回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


原発性胆汁肝硬変症においてウルソデオキシコール酸は肝 Nrf2 を活性化する

Enhanced hepatic Nrf2 activation after ursodeoxycholic acid treatment in patients with primary biliary cirrhosis.     Antioxid Redox Signal. 2010 Aug 1;13(3):259-68

川田一仁氏  (医学科第20期生)    本学  第二内科  医員

要旨

【はじめに】原発性胆汁性肝硬変症(PBC)の第一選択薬はウルソデオキシコール酸(UDCA)であるが、改善の機序は未だに明確ではない。転写因子Nrf2は 抗酸化遺伝子群の調節における重要な因子であり、動物実験で UDCA が Nrf2 を活性化させることが報告されている。今回我々は、PBCにおいて UDCA 療法の Nrf2 の活性化と抗酸化作用に関して検討をした。

【材料と方法】UDCA 投与前後で肝生検を施行した。13例の早期 PBC 症例(Ludwig 分類 stageT 9例、stageU 4例)を対象とした。UDCA 投与前後の血液検査所見、 肝組織所見、肝組織中の酸化ストレス、肝 Nrf2、リン酸化 Nrf2 および、Nrf2 標的遺伝子群の発現、血清総胆汁酸量や血清胆汁性分画を比較検討した。 正常肝として UDCA 投与の既往のない4例の転移性肝腫瘍症例の切除標本の背景肝を用いた。

【結果】UDCA 投与後、血中肝胆道系酵素は低下し、肝組織所見では小葉内壊死炎症反応の改善を認めた。
    UDCA 投与前の肝細胞と胆管細胞は、免疫組織染色法において 8OHdG 陽性率が正常肝と比較して有意に高く、UDCA 投与後は共に有意に低下した。
    UDCA 投与前の Nrf2 とリン酸化 Nrf2 蛋白は、ウェスタンブロット法では正常肝と同程度であり、UDCA 投与後に共に有意な増加を認めた。免疫組織 染色法で、リン酸化 Nrf2 を発現している胆管細胞が UDCA 投与後に明らかに増加した。
    Nrf2 標的遺伝子群は、TRX および TrxR1は UDCA 投与後に有意な増加を認めたが、γGCS、HO-1、PRX、GPx2 は、正常肝および UDCA 投与前後で変化は 認められなかった。
    血清総胆汁酸量と UDCA 濃度は、UDCA投与後に有意に増加した。

【結論】UDCA は PBC において Nrf2 を活性化し TRX と TrxR1 を誘導することにより酸化ストレスを軽減し病態進展を抑制することが示唆された。