第15回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


IL-1βと IL-17A による気道における MUC5AC 発現の制御機構 NF-κB パラダイム 

Regulation of Airway MUC5AC Expression by IL-1β and IL-17A; NF-κB paradigm       Journal of Immunology 183(10): 6236-43, 2009

藤澤  朋幸氏  (医学科第18期生)    本学  検査部  助教

要旨

慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息に代表される慢性気道疾患は、気道炎症と粘液過剰産生を主要病態とする疾患である。

ムチンは粘液の主成分となる糖タンパクで Mucin(MUC)5AC は気道の主要なムチンとして知られるが、気道 MUC5AC 発現制御機構の理解は未だ十分でない。 臨床的上、過剰に分泌された粘液は気道閉塞による病状悪化をもたらすため、その解明は粘液過剰産生を標的とした新しい治療法開発の一助となることが 期待される。

近年、気道上皮の NF-κB は気道炎症をもたらす主要な因子であることが示され慢性気道疾患の病態解明において注目されているが、ムチン制御における NF-κB の役割に関する研究は未だ途上である。そこで、気道 MUC5A 発現における NF-κB の関与を解明すべく、NF-κB を活性化し慢性気道疾患での 増加が報告されている前炎症性サイトカイン IL-1β と IL-17A による MUC5AC 発現制御機構を、ヒト気管上皮初代培養細胞系を用いて検討した。

IL-1β、IL-17A は気道上皮における MUC5AC 発現を誘導し、NF-κB 阻害剤と p65 siRNA はそれを抑制した。MUC5AC プロモーターレポーターアッセイにより、 MUC5AC プロモーター -3594/-3582bp に位置する NF-κB 結合領域が IL-1β, IL-17A による MUC5AC 転写活性に必須であることが示された。 クロマチン免疫沈降法を用いて、IL-1β、IL-17A により p50 と MUC5AC プロモーター上 NF-κB 結合領域の結合が増強することが示された。 以上より、NF-κB は MUC5AC プロモーターに直接結合しその発現を促進させる主要な転写因子であると考えられた。

本研究から、NF-κB は気道炎症のみならず粘液過剰産生へ直接関与する事が示され、それらを同時に制御しうる慢性気道疾患における新たな治療標的となる 可能性が推察された。