第14回 浜松医科大学 同窓会学術奨励賞受賞論文要旨


血管内皮細胞特有の組織型プラスミノゲンアクチベーターの分泌動態とその阻害因子 PAI-1 による修飾

Unique secretory dynamics of tissue plasminogen activator and its modulation by plasminogen activator inhibitor-1 in vascular endothelial cells. Blood 113:470-478,2009.

鈴木優子氏  (医学科第14期生)    本学生理学第二講座    助教

生活習慣病やメタボリック症候群において,線溶阻害因子であるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター1型(PAI-1)量の増加は,独立した冠危険因子であることが免疫学的に証明されている。一方,その標的酵素である組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)は血管内線溶活性化因子であり,血管内皮細胞にて産生・分泌されるが,その詳細な分泌および活性発現機構はあきらかでない。

本論文では生細胞リアルタイムイメージング技術を用いて,培養血管内皮細胞からの tPA 開口放出動態を全反射蛍光顕微鏡にて可視化することを試みた。

細胞に緑色蛍光蛋白(GFP)融合 tPA 遺伝子を導入し,発現した tPA-GFP の細胞内局在性や tPA としての特性が内因性 tPA と同等であることを検証した後,定常状態(非刺激下)における tPA-GFP の開口放出動態を検討し,次の知見を得た。

1)分泌顆粒開口後, tPA-GFP は細胞表面に滞留し緩徐に放出される。重鎖欠損 tPA-GFP では滞留現象が消失することから, tPA は重鎖を介して細胞表面に滞留する。

2)i) tPA の特異的阻害因子である PAI-1 の添加により tPA 滞留時間は短縮し,上清中には遊離 tPA は認めず添加 PAI-1 濃度依存性に tPA-PAI-1 複合体量が増加する。 ii) PAI-1 と複合体形成をしない変異 tPA-GFP および iii) siRNA による PAI-1 発現抑制下では滞留時間が著明に延長する。 i)ーiii) より PAI-1 は細胞表面滞留 tPA と高分子複合体を形成し tPA の細胞表面からの遊離を促進する。

3)プラスミン発色基質を用いた tPA 活性解析により, PAI-1 は細胞表面における内因性 tPA 活性を抑制する。

以上, tPA は開口放出後,その重鎖を介して細胞表面に滞留するという血管内皮細胞特有の現象を見いだした。この tPA 細胞表面滞留は PAI-1 により修飾されることから, PAI-1 は液相中のみならず細胞表面 tPA 活性をも制御するという新たな線溶活性調節機構を本論文では提唱している。